わらって、わらって

 なんとか月子が帰ってくる前に出来上がって、簡単ではあるけれどラッピングもして。月子が帰ってきたのを見計らって、哉太と錫也は月子の家へと向かった。
「ただいま、すずちゃん、かなちゃん。どうしたの?」
 月子は持っていた荷物を玄関に置いて、哉太と錫也のもとに来る。
「け、けっこんしきはどうだったんだ?」
「はなよめさん、すっごくきれいだったよ」
「かなたと、たのしんでるかな、ってはなしてたんだよ」
「そうだったんだ!とってもたのしかったよ!」
 とびっきりの笑顔を見せる月子に、見ている哉太や錫也も笑顔になる。
「それでね、つきこがいないときに、ぼくとかなたで、つきこへのプレゼントをつくったんだ。かなたが、つくろう、っていってくれて」
「べ、べつにそんなたいしたいみはないんだからな!ただ、いつもいろいろしてくれるから、その…」
「ありがとうのきもちをこめたんだよね」
「そ、そうだよ!それだけだからな!」
 哉太と錫也はそれぞれ、後ろに隠していたプレゼントを渡す。
「ほんとに!あけていい!? 」
 錫也が頷くと、月子は笑顔のまま受け取ったプレゼントを開け始める。
「わああああ!」
 月子の歓声と共にラッピングの中から出てきたのは紙粘土で作られた写真立てと小物入れ。両方とも錫也の家にあった、使わなくなった写真入れとジャムの瓶を土台に作ってある。
「さ、さんにんでとったしゃしんをいれてくれたらなって」
「つきこはかみがながいから、かみどめをいれるのにちょうどいいかな、っておもったんだ」
 どう…?と心配そうに尋ねる哉太に、月子はとってもうれしいよ、ありがとう、と笑った。
「そうだ、わたしからもふたりにわたしたいものがあるの」
「「わたしたいもの?」」
 月子の言葉に二人がきょとんとしていると、小さな紙袋をひとつずつ、二人に手渡した。
「おみやげ!」
 中には、種類違いの編みぐるみのストラップ。哉太がクマで、錫也がネコ。
「わたしとおそろいなんだよ、ほら!」
 そう言って月子が見せたカバンには、うさぎの編みぐるみが付いていた。
「ありがとな、つきこ」
「またつきこにおかえししなきゃ。ね?かなた」
「そんな、いいんだよ。わたしは、すずちゃんとかなちゃんがよろこんでくれたらうれしいの」
「ぼ、ぼくたちだってつきこがわらってくれればうれしいんだ!」
 顔を赤くしながら言う哉太に、月子と錫也は顔を見合わせ笑った。
「そしたら、わたしも、かなちゃんも、すずちゃんも、みんなうれしいね」
「それがいちばんだよ」
 楽しそうな声が、辺りに響く。いつの間にか、空は赤く染まり始めていた。
「じゃあ、そろそろかえるね」
「うん、ありがとう」
「またあした」
 左右に揺れる三つの手はだんだんと離れていき、それぞれの家へと入る。ほぼ同時に、帰宅を告げる声が聞こえてきた。

 翌朝、幼稚園へ向かう三人のカバンにはそれぞれ、あみぐるみが揺れていた。

2011.9.24  fin.